モラル・ハザードと孤独死


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モラル・ハザードと孤独死

生活保護と年金の不正受給に見るモラル・ハザード

生活保護と年金の不正受給に見るモラル・ハザード 勤勉だと言われた日本人のモラルに、最近、変化が見えます。特に、生活保護や年金の不正受給問題は、以前は考えられなかったモラル・ハザードの形態という点で非常に気になることです。最近の生活保護や年金の不正受給問題は、ごく普通の人達が躊躇なく行っているところに根の深さが感じられるからです。
つまり、一部の暴力団関係者や名ばかりの悪徳NPOによる不正受給を除くと、殆どはごく普通の一般人が生活保護や年金の不正受給に手を染めているのです。
一体、日本人は何時ごろからモラルを失いつつあるのでしょうか?以前の日本人には「自分の糧は自分で稼ぎお上の世話は受けたくない」という根性やプライドがありました。
しかし、何時の日からか、目先の損得や金銭上の損得を優先するようになってしまいました。その様なモラルの変化が収入をごまかして生活保護を受ける人や、親が死んでも葬式も出さずに親の年金を受け続ける人を生み出しています。
この様な風潮を生んだ背景に、少子高齢化と核家族化による地域社会の崩壊が関係しているかも知れません。また、長引くデフレ不況と新自由主義の弊害である経済的な格差の拡大によって勝ち組と負け組みが明確に分れ、そのことによってモラルやプライドを失う人が増えているのかもしれません。
つまり、日本の特長と言われた国民の大部分が中流だったという古き良き時代から、現在は持つ者と持たざる者に分けられているのかもしれません。
更に、国家国民の事よりも自己や組織の利益を優先する政治家や役人の姿に、国民が嫌気を差しているのかもしれません。
従って、今後は日本の行政手続の根本だった申告主義を改めて、マイナンバーなどによる国家管理が強まっていくことが考えられます。もはや「覆水盆に返らず」で後戻りすることはできないのです。


孤独死

孤独死 一方、何の行政サービスを受けることなく、ひっそりと孤独死する人も後を絶ちません。少子高齢化と核家族化による地域社会の崩壊の中で高齢者の一人暮らし世帯が増えているのが原因ですが、それだけではありません。
財政赤字の増大による緊縮財政で、国や地方公共団体の行政サービスの質が落ちているのです。特に、高齢者福祉サービスや医療サービス分野に於いては、経験豊かなスタッフによるキメの細かい対応が必要なのです。ところが、予算の削減と配置される人員の数と質の低下によって、行政サービスの中に人間としての思いやりが欠けていることが指摘されています。
人々のモラルが低下している現在の世の中ですが、自分の権利さえも要求しない或いは要求できない人が居ることを行政側は忘れてはなりません。

最低賃金を上回る生活保護費

生活保護受給のモラル・ハザードの背景に、最低賃金問題があることも否定できません。現在、生活保護費の「生活扶助」と「住宅扶助」の合計額は、フルタイムで働く人の最低賃金を上回っています。それに加えて生活保護の受給が認められると、住民税・医療費・介護費用・NHK受信料などが無料になります。
その結果、正社員になれなかったフリーターや派遣社員が、フルタイムで働くよりも失業を理由に生活保護を申請している訳です。
従って、行政システムが汗水流して働くよりも生活保護を受ける方を、選択させているとも言える状態です。日本の官庁の縦割り行政によるセクショナリズムの弊害がここにも見えるのです。
従って、早急に最低賃金を引き上げることが求められます。或いは、就労可能な年齢の人に対する生活保護費を引き下げなければ筋が通りません。
つまり、汗水流して働く方が生活保護を受けるよりも収入が多くなる、当り前の制度に改善しなければ生活保護受給者は減りません。